緊張と緩和

ギターとかジャズとか格闘技とか

ジム・ホールのこと

初対面の印象は良くなかったけど、時間とともにどんどん好きになるものって人生の中でいくつかあると思います。
中学高校の頃からずっと同じ音楽を聞いてて、音楽の好みがほとんど変化してない僕ですが、年とともに大きく変化したものがあります。
ジム・ホールがそうです。

はじめてジム・ホールのアルバムを聞いたときは、「地味だなあ」「華がないなあ」「ガツンとくるものが無いなあ」という印象でした(たしか高校生くらいのとき)。
当時好きだったギタリストは、
フレディ・キング、ジミ・ヘンドリックスウェス・モンゴメリーでした。
ガツンときて味の濃いギタリスト勢揃いという感じです。

今はといえば、
リズムとの絡みがおもしろいフレーズが随所にあり、
記憶に残るフレーズが盛りだくさん、
ワイルドな演奏にグッとくる、
という、ジム・ホールについては、当時と全く違う印象を持つようになりました。

音楽の嗜好はほぼ変わってないのに、ここまで印象が変わるのはなぜだろうか?
地味なものが好きになったわけではないのに。

おそらく、
『旋律の美しさ』、『調和や不協が生み出す響き』、『リズムの複雑さ』
が理解できるようになったからではないか、と思う。

『音数の多さ』とか『音質の分厚さ』とか『リズムの速さや重さ』
といった刺激よりも、
『ピュアな旋律・律動』
をキャッチできるアンテナが自分の中に出来たからからではないかと。

年とともに刺激物が苦手になり地味なモノに嗜好が移る、ということではないと思う。
ケーキやカレーみたいな派手な味も好きだけど、塩辛やぬか漬けのような奥深い味にグッとくる、みたいな。
味覚の守備範囲が広くなったような感じではないかと。

リックが少ない、というところもジム・ホールの演奏の特徴と思います。
いわゆる仕込まれたフレーズが少ない。
そのときそのとき演奏にあわせてフレーズを弾いてる。その場の自然な文脈から選ばれる音を弾いてるように思います。
リックをつなぎ合わせるようなソロは弾かない、といった一本気なところがすごく良い。なんというか、ストイックというよりもストロングな印象。

聞くほどにいろんな発見があって良いです。奥深い。

印象は経験や学習によって大きく変化する、というお話でした。