『ダメな人間』(深夜寄席・新真打昇進卒業公演@新宿末廣亭)
8月24日(土)に行ってきました。1年ぶりの新宿末廣亭。
この日は今秋真打に昇進される落語家さんたちの卒業公演でした。
演目は以下。
わさびさんの『ダメな人間』がとても印象に残った。
あらすじ
飛び降り自殺しようとしている中学生の少年を止めようとする警察と近所の人。
聴けば2人の女の子を好きになってしまった自分がイヤで、「こんな自分は将来絶対不倫をする」と言い出す。
警官や近所の人がが少年のダメさをなだめても、次々に自分がしたダメなことを言い続け自殺するのを止められない。
そこにやってきた猿渡警部。寝坊のうえに二度寝してしまい現場に遅刻してきたとのこと。しかも、寝坊の理由が「深夜にYou Tubeに熱中して寝るのが遅くなったため」。
近所の人も自殺少年も猿渡警部のあまりのダメさを厳しく咎めはじめる。
そして...。
他人のダメなところを叩く世の中を風刺した噺。
「自分のダメさを自分で咎める少年」と「自分のダメさを周りに叩かれまくる警部」の対比がおもしろい。
「落語とは、人間の業の肯定である」と立川談志の有名な言葉がある。
落語(古典落語)にはいろんなダメな人が出てくる。
働かないで酒ばかり飲んでたり、博打で家族を泣かせたり、人をだましたり、ちょっとしたズルをしたり。
それぞれにダメな業の深い人たちである(そしてダメさ故に愛すべきキャラクターでもある)。
こういう人が現代に生きてたらどうなるだろう。もしインターネットがあったら叩かれるのだろうか?わらわらと集まってきた知らない人たち(=当事者・関係者でもないのに徹底批判する人たち)に総叩きされるのだろうか?
なんてことを考えた。
ちなみにこの噺、最後は急な展開のうちにサゲとなる。あっけなく終わる。
「猿渡警部のダメさ」は近所の人にも自殺少年にも受け入れられないまま。
放り出されたような印象を受けてしまったのだが、これはこれで不思議と後味は良かったので良いなあと思った。
なんで後味が悪くなく良いと思ったのかはよく分からない。
これはこれで業の肯定なのかもしれない。