緊張と緩和

ギターとかジャズとか格闘技とか

今月聞いた新譜(2019年2月)

例によってリリースされて半年未満のものは新譜という括りで。


BAY OF RAINBOWS

BAY OF RAINBOWS

ヤコブ・ブロ・トリオです。
2017年7月ニューヨークでのライヴ盤。

夢の中で響いてるような音です。幻想的。
ライブ収録なのを忘れて聞いてて、曲終わりの拍手で「あ、そういえばライブ盤だったんだ」と思い出すくらい。
ビル・フリゼールっぽい音だなあ、と思ってたらヤコブ・ブロもテレキャスターを使う方だったんですね。硬質なガラスのような透きとおった音にエフェクトで広がりをもたせた感じが似てるように思います。

ヤコブ・ブロの音楽を聞くと「俺はいま何を聞いてるんだろう?ジャズ?エレクトロニカ?」とふと思うことがある。考えても解はないので深くは考えないけど。

今月聞いた新譜(2019年1月)

例によってリリースされて半年未満のものは新譜という括りで。


Live

Live

マルチン・ボシレフスキ・トリオです。
2016年8月ベルギーのジャズ祭でのライヴ盤。
静謐な旋律。そこから絶妙な余韻や奥行きが広がっていく。ECMらしいライブ盤です。

マルチン・ボシレフスキをはじめて聞いたのはたぶんトーマス・スタンコ・トリオとの共演盤、『Lontano』(2006年)だったと思います。いまでもたまに聞きます。大好きなレコード。
それからだいぶ経ってマルチン・ボシレフスキ・トリオ名義のアルバムで『trio』(2010年)を聞いたのですが、そのときは「キース・ジャレットみたいだなあ」という印象でした(当時は転職したばかりで余裕がなくこのアルバムを聞き込んでなかった)。

で、久しぶりにこのアルバムでマルチン・ボシレフスキの演奏を聞いたのですが、良いですね。すごく好き。
印象が以前とだいぶ変わりました(というか、以前はきちんと聞き込んでなかったのが原因)。
叙情的で静謐。と思ってたら、突如激しい側面を見せる場面も有り。ガツンとくる刺激物が薬味的に来るのではなく、じわじわと地面が揺れるようなグルーブを感じる激しさ(マッコイ・タイナーみたいな激しさ?いや、ちょっと違うかも)。
ECMから出てほかのアルバムも聞いてみようと思います。

ぜひライブで聞いてみたいのですが、1月に来日したのですね。1週間前に知ったので予定を空けられずライブに行けなかった。残念。
情報に疎いのは良くないですね。

今月聞いた新譜(2018年12月)

新しい年が開けましたが、去年の12月のことを書きます。
例によってリリースされて半年未満のものは新譜という括りで。


ライブ・アット・シャイニー・ストッキング

ライブ・アット・シャイニー・ストッキング

中牟礼貞則さんのリーダー作です。
再発なので新譜じゃないです。でも出たばかりなので。

その昔、江古田に存在してたシャイニーストッキングというジャズ・クラブでの1979年のライブ録音です。
40年前なのでジャケットの中牟礼さんのお顔も若いですね。
中牟礼さんのライブは何度か行かせて頂いてるのですが、トリオの演奏を聞いたはこのアルバムがはじめて。個人的にはなかなか新鮮です。

12月16日(日)に「GUITAR MAGAZINE presents ニッポンのジャズ ビクター名盤8作品リイシュー記念トークショー」というイベントに行ったのですが、そのときに中牟礼さんがこのアルバムへの想いを語っていて胸がジーンとなりました。
そのときの書きなぐりのメモを見ると、

  • このアルバムは自分ではあまり聞かなかった。
  • しかし再発を期にあらためて聞いた。
  • 演奏的には気に入ってないところもあるが、今聞くと感じ入るものがある。
  • やってることはいまも基本的には変わってない。
  • このアルバムは自分の原点。

とのこと(イベント中に走り書きしたメモなので、表現がだいぶ違ってるかもですが)。

イベントでは中牟礼さんの音楽に対する真摯な姿勢が垣間見えるお話が聞けて非常に感動しました。
これからもこのアルバムを聞くとそのときのことを思い出します。

行ったイベントはコチラ
real.tsite.jp



ところで、
同じく12月の初めにこちらを買いました。

カンヴァセイション

カンヴァセイション

こちらも再発です。再発されてるのを知らなくて慌てて買いました。
稲葉国光さんとのデュオです。1975年の作品。
ゴツゴツしてた稲葉さんのベースと繊細な中牟礼さんのギターが対話してるようなアルバムです。
ベースの音がすごく良いです。力強い弦の響き、ボデイの胴鳴りの音、迫力と説得力がすごいです。
2人がのびのびと(かつ緊張と気迫をもって)インタープレイしてるのが感じられます。
先の「シャイニーストッキング」よりもこちらのアルバムのほうが聞く回数は多いと思います。
ギターとベースのディオはすごく好きなのですが、このアルバムはその中でもかなりのリピート回数と思います。

今月聞いた新譜(2018年11月)

例によってリリースされて半年未満のものは新譜という括りで。


ザ・ドリーム・シーフ

ザ・ドリーム・シーフ

  • アーティスト: シャイ・マエストロ,ホルヘ・ローダー,オフリ・ネヘミヤ,ホルト・マーヴェル
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2018/11/07
  • メディア: CD
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シャイ・マエストロ・トリオです。

ジャケットのイメージのようにモノトーンで寒色な世界が背景として広がるのですが、その背景に描かれるアプローチは華やかです。
淡々とした寒々しい中に時折日差しが差し込むような感覚。この感覚はすごく良い。
そして冷たいまま静かに激しく燃え上がる瞬間もあります。
ちょっと単調かなという印象はありますが(とくにドラムが、前作と比べて)、でもこれはこれですごく好きです。



秋が深まるとピアノトリオが聞きたくなります。
最近よく聞くのはビル・エヴァンス・トリオのリバーサイド4部作です。
トリオ全員の音がクリアに聞こえるところがすごく好きです。

映画『ブルーに生まれついて BORN TO BE BLUE』を見ました

風邪で数日床に臥せっていました。
時間があるのでこれチャンスと以前から気になってた映画を見ました。
見た映画はチェット・ベイカーの自伝映画『ブルーに生まれついて BORN TO BE BLUE』(2015年制作)です。

チェット・ベイカーの映画といえば、『LET'S GET LOST』(1988年制作)というドキュメンタリー作品があるのですが、今回見たのは、事実をもとにしたフィクションらしいです。たぶん。

物語的には、1960年代中半から1973年までを描いています。チェット・ベイカーがイタリアで逮捕されてから1973年にディジー・ガレスピーの尽力で復活するまでの物語。喧嘩で前歯を折られるというエピソードも含まれます。

チェット・ベイカーをダメ男として描かれてる的な映画のあらすじを聞いてたので、「ダメ男を叙情的に描いた映画だったら嫌だなあ」と思ってたのですが、そんなことは無く、クールで飄々として生命力あるチェット・ベイカーが描かれてます。だからこそ映画の結末はとてもつらいです。重すぎる選択に何も言えなくなってしまいます。音楽への業の深さというか、なんでしょうね。やるせない気持ちになります。

この映画のその後のチェット・ベイカーについては、『LET'S GET LOST』でドキュメンタリー映画になっています。最晩年の1987年~1988年に撮影された映像です。五十過ぎとも思えないシワだらけの顔に驚かされます。そこにはヘロインに溺れた日々が刻まれてるように見えます。でも、そんな外見でも歌い出すとあの頃の甘くロマンティックな歌声です。若さはもうないがその代わりに枯淡の味わいが増し、それでもまだまだ甘さがある。なんていうか、音楽への逃れられない業の深さに残酷さを感じます。

というわけで、『ブルーに生まれついて BORN TO BE BLUE』を見たら『LET'S GET LOST』もあわせて見たいのですが、日本版のDVDは発売してないんですね。。日本版発売しないですかね...。

そういえば、今年はチェット・ベイカーが亡くなって30年目です。
偶然ですが、良い節目で見れたのもよかったです。

ジャズに興味ない人でも楽しめる映画と思います。




11/26(土)公開『ブルーに生まれついて』予告編



Let's Get Lost - Trailer